遠藤哲夫『汁かけめし快食學』




叶姉妹のような得体の知れない生活をしていない限り、おそらく誰もが一度は食したことがあるだろう。
味噌汁かけご飯。
前の日につくった味噌汁を温めなおし、保温してあって少し水分を失ったご飯にザバッとかけ、ざくざくかき込むアレである。そんな味噌汁かけご飯をはじめとした「汁かけめし」を話題の中心に据えた本がこの『汁かけめし快食學』だ。
著者は言う。「汁かけめしはえらい!」のだ。素早くしっかりと食事を済ませられる汁かけめしは、現代日本をつくった縁の下の力持ちであり、決して軽んじられる存在ではないにもかかわらず、なぜか下に見られている。しかしよくよく見れば、味噌汁かけご飯も、カレーライスも、牛丼も天丼もカツ丼も親子丼も、みんなみんな、汁かけめしなのだ。現代日本に根強く残り続け、日本人を支え続ける汁かけめしたちに遠藤哲夫は惜しみない賛辞を贈る。その賛辞と、現代の食事に対する反発と警鐘が、この一冊に詰まっている。
汁かけめしの歴史は平安時代からはじまる……数々の参考文献も用いながら、日本でどのように進化し人々に愛されていったかを追っていく「汁かけめしパート」と、それらの中でも特にスポットを当てて深く追求していく「カレーライスパート」の二部構成である。
まぁとにかく、うまいものをうまい!と言って食えばよいのだ。それが一番健康で、自然なことで、素敵なことなのだ、という気持ちにさせてくれる。もちろん、読み終わったらまず思い浮かぶのが、「あぁ、汁かけめし食べたいなぁ」になるのは間違いない。