浅草「ステーキハウス のぶ」




日曜日の浅草は、観光客と、外国人と、人力車と、地元民で大混雑なのだけど、それがいい。大好きだ。ふらふらと、ふらふらと迷って、浅草公会堂を過ぎて、飲み屋街で昼間からビール飲んで焼きトン食べてる人たちを横目に、当てもなく、気の向くままに歩くのがこんなに楽しいとは。もちろん、隣に気の置けない彼女がいるというのは加味するとしても。
浅草は大正時代だったか、ともかく銀座が今のように華やかになるまでは文化の中心だったそうだ。谷崎潤一郎が都市論を書いていて、そこで当時の浅草の様子を克明に書いていたのを講義で読んだ。それ以来、どうも浅草に行くと、自分が街に溶け込んでしまう。気持ちだけがタイムスリップをして、それは平成とか昭和とかそんなレベルではないくらいにぎぎゅーんっとさかのぼってしまって、はて今はいったい何時代なのだろうなんて思うくらいに。浅草には、そんな妄想と錯覚をやんわりと受け止めてくれる包容力がある気がする。

昼食は「ステーキハウス のぶ」でハンバーグステーキ840円をいただいた。
カウンターだけの狭い店で、寡黙なマスターとバイト(息子かもしれぬ)がテキパキと働く気持ちのいい店。鉄板が座った目の前にあり、ステーキなど頼むと、どうやらそこで焼いてくれるようだ。
付け合せのもやし炒めには鉄板を使っていたが、ハンバーグステーキには鉄板を使わなかった。目を離した隙に、用意した皿の上に置かれて、ソースをかけられて、コーヒーミルクをかけられていた。見失ったというか、いきなり皿の上にぽんっとハンバーグが現れたような感じである。すでに焼いて置いてあったのかもしれない。切ると肉汁がだらーという感じではなかったから。
でも、味は上々。肉の味がぎゅっと濃く、ご飯がたまらなく合う。ハンバーグのサイズはそれほど大きくない俵型なのだが、少量を含んでも肉の味が口内で爆発するかのごとくなので、想像以上の満足感がある。焼きたてが食べられたらどれほどいいだろうと思った。もちろんそれ以上に、あと500円かそこらを出して「サービスステーキ」なるものを食べればよかったと少々悔いた。
恋人は「オムライス」を食べていた。ケチャップライスの正統派かと思いきや、中にビーフシチューが入っている変り種。ごろっとした肉の塊が、塊が、もうなんともいえず、あぁ、ずるい、ずるいと言わざるを得ない。オムライスとビーフシチューご飯が一度に味わえる素晴らしき一品。まだ舌も体も幼い頃にこれを食べてしまったら、下手に他所でオムライスが食べられなくなってしまいそうだ。自分の娘か息子には、食べさせないようにしようと誓った。いいか、こんな、ゴロッとお肉の入ったオムライスなんて、他じゃないんだからな!家で作るなんて、もっと無理なんだからな!って。お父さんのオムライス、お肉があの柔らかくておいしーいお肉が入ってないーなんて涙目になられたら、私はもうどうしたらいいんですか。まったく。