三鷹「うどん屋 三丁目」/「うどん とよくに」




母親が「この前通りかかったら新しくできてたのを見かけたのよー」と言っていたので、昼飯に行ってみた。三鷹駅南口から出て大通りを直進し、鯛焼きで有名な「たかね」の前あたりに「うどん屋 三丁目」はあった。カウンター3席と、テーブル席が4つほどのこじんまりした店である。白を基調とし、道路に面した窓も大きく、明るい雰囲気。
食券制。讃岐素うどん400円。
麺は讃岐から取り寄せているようだ。しかし、讃岐から取り寄せるといっても、麺の種類が肝心になる。乾麺と半生麺と生麺、種類が違えば味やコシも違う。これは香川でお土産屋に入ったとき、しきりに「うちのうどんは生麺だから!」と薦めてきた店主の受け売りなのだが、大抵のお土産用のうどんは半生麺で、厳密に言えば、それでは讃岐の味を出すことはできないという。近いものなら生麺を選ばなければならないらしい。しかし、保存が効きにくいと思われる生麺を毎日のように取り寄せるというわけにもいかないだろう……そんな入れ知恵もあって、私は香川に行ってからというもの、東京での讃岐うどんと看板を掲げるうどんを信じないことにした。やっぱり違うからである。まがい物、という感じがしてしまう。それならば駅前の立ち食いうどんのように、堂々と、讃岐などという字に頼らず売ればよいのに、と思ってしまう。
入店時の挨拶がないので、店員さんに愛想がないんだなぁ、などと思いながら、空いているカウンターに座って食券を出す。そこで気づいた。配膳係の女性の顔が、日本人ではない。厨房に立つ男性の顔も、日本人ではない。なるほど、なぜメニューにベトナムビールがあったのかの謎が解けた。厨房の冷蔵庫には、注文に際してのこんな張り紙もあった。
「少し、言葉が苦手なので簡単な言葉でお願いします」
ちょっと可愛くもあるけれど、それでよく日本でうどん屋をやろうと思ったものだ……なんて考えていると、うどんが運ばれてきた。ねぎ、みつば、かまぼこが2枚。つゆは濃い目。すすってみると、麺は細めで、もちもち感はやや弱い。一玉の量はそれほどあるわけではないから、女性にはちょうどよいかもしれない。つゆが甘い。甘く感じているだけかもしれないが、これはトッピングの生卵50円をつけるべきだった。風邪を引いて食事もろくに取れなかった病み上がりに食べたら、それは美味いに違いない。そんな印象であった。美味しかったことは美味しかった。

私の胃袋、どうにも納得してくださらない。
スペースにも余裕がある上に、いいのか、この微妙な気持ちを引きずったまま昼食を終えていいのか!と訴えてきたのである。困った。と思ったが、実は困ることはないのだ。うどん屋をはしごしてしまえばいい。三鷹には隠れた(?)イイ店がある。北口の階段を降り、武蔵野芸術劇場へ向かって直進。そのまま少し歩いて、路地を入ったところにある「讃岐うどん とよくに」*1である。
かけうどん400円をいただく。
ここも讃岐うどんと銘打っているが、はっきり言って、ここのうどんはかなり本格派であると思える。讃岐帰りの私も、これが東京で食べられるのならば満足だろう、といううどんなのだ。つゆはあっさり系で澄んでおり、少しねじれた中太麺のもちもち感も十分。おそらく自家製麺なのだろう。具は海苔とかまぼこ2枚、あさつきがぱらぱら。
トッピングで多種類ある天ぷらを頼めるのも本場らしい。それもちゃんと讃岐風で、大きさも申し分なし。けち臭いこと言わぬボリュームであるから、間違っても「野菜かき揚げと、ちくわ天と、きす天と……」などとやってしまわぬように。
そして私が何より、あぁそうそう、これなんだよなぁと思ったのが、卓上にセルフでいれる天かすが置いてあること。これ、高松のうどん屋では大抵のところで見られるサービス。これだけで、かけうどんがたぬきうどんへと進化してしまうのだから、ありがたいものである。食べている途中でパラリとやって、味に変化をつけるのもよいし、何よりやっぱり、無料というのがよいではないか。
ジブリ美術館太宰治文学サロンなどに行かれる際に、ぷらっと入ってみるのを薦める。もっとも、ランチタイムには近所の会社員でにぎわう人気店なのだけれど。