穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』




歌人である穂村弘が『ダ・ヴィンチ』に連載したエッセイをまとめた一冊。穂村弘の名前は、ちょっと自信がないのだけれど、大塚英志の著作(たぶん『キャラクター小説の作り方』)で見たことがあり、覚えていた。この本をたまたま手に取ったのは、これはもう、たまたまなのでよくわからない。正直なところを言えば「うーん短歌はちょっと読み解けないけれどエッセイならいけるだろう」という安直な思いからがあったのだろう。


で、とても面白かった。なにしろタイトルがいい。運命の人、というのはめぐり合って初めて「あ、運命の人だ!」と自分で感じるわけだけれど、この人(穂村か、それともあなた自身か)かが「ねぇ、あなたって運命の人なの? 私にとって、どうなの?」と聞いたとしても、普通に考えれば、わからない。わかるはずもないからだ。この違和感と妙な可愛さ、買える!


内容は恋愛に奥手というか「不器用」な穂村弘の言説が、自分の体験や恋愛に絡めて語られている。昨今話題(?)の「非モテ系」に通ずるようなもどかしさがあり、おかしさがあり、必死さがある。どこか行き過ぎの面もあったけれど、そこにはしっかりと穂村自信の眼差しがあり、面白い切り口があるので、読んでいて純粋に楽しいエッセイだと思う。最も、エッセイといえどすべて実体験ではないだろうから、ある程度の「キャラクター付け」はしているだろうけれども。


恋愛に不器用でなーんかうまくいかない男のエッセイ……なんだか“逆”『SEX and the CITY』みたいな感じがあった。キャリー・ブラッドショー穂村弘が対談したら、なんだかとっても面白そうだ。いや絶対に、面白い。