田中ロミオ『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』




人類は衰退しました』でぐーんと株を上げた山田ロミオの最新刊は学園ラブコメもの。


という触れ込みで読んではみたが、果たしてラブコメかといわれればちょっとわからない。確かにラブ要素もあるし、コメディーでもあるのだけど、単純に括れない気がしてならない。高校デビューを誓う主人公・佐藤一郎のいるクラスは、なぜか半数が妄想戦士(ドリームソルジャー=多分にアニメ・マンガ・ファンタジー的な自己設定を現実にまで持ち込む人々=早い話がリアル中二病)だった。そんな中、青いローブを着て魔法の杖を持つリサーチャー・佐藤良子と知り合い、一郎の学園生活は崩壊していくのだが……というのが大筋。


設定は面白い。ライトノベルというステージでライトノベルそのものをネタに使う大胆さもあるし、良子の話し方がどこか長門有希を彷彿とさせるのも時代を追っている感じがする。文章に小ネタが利いていて、緩急もある。ライトノベルとしての平均値はとても高いと思う。職人芸も感じるが、どこか古臭さ=使い古された感があるのは、やはり中二設定・厨房設定がすっかり笑いの種として消費しつくされてしまったからなのだろうか?


深夜の学校で良子と出会うシーンは『Kanon』の川澄舞ストーリーを思い出させるし、話し方は長門有希だし、様々な方程式やお約束の上で踊っているように感じられるのが『人類は衰退しました』との強度の差を表しているのかもしれない。それだけ『人類は衰退しました』が作者自身のハードルを上げてしまったのは仕方がない。ただ、これで田中ロミオという作家の評価は下がったわけではなく、この人の器用さや巧さが確実なものになったのではないか。

もっとも以前より学園モノのノベルゲームシナリオを担当していたのだから、これくらい書けて当然、という見方も出てきそうな気がする。それであれば、メディアの違い(「紙媒体」である)を引き合いに出すしかないが、田中ロミオ片岡とものようにノベルゲームシナリオからライトノベルに、またライトノベルからノベルゲームシナリオへの移行が目立つということもあり、この密な両者の関係をどう論じるか、というのも誰かに期待してみたいところではある。


私は、やらない。研究量が足りなすぎるのもあるし、モチベーションが続かないだろう。作品研究ではなく作家研究・傾向研究として、純粋に読んでみたいとは思うのだけれど、難しいかなぁ。