小西康陽・常盤響『いつもレコードのことばかり考えている人のために。』




両氏のファンであるため、ネットで一目見たときから気になっていた。どちらも無類のレコードコレクターということは、知っていた。特に常盤響さんは、実は、お会いしたことがある。ご自宅に上がらせていただき、そこで実際にコレクションの一部を見たことがある。部屋中にぎっしりと詰まったレコード。見た瞬間、部屋全体に濃密な空気が流れていると思った。自分の知らない世界に足を踏み入れてしまった、という身震いもあった。


膨大なレコードコレクションの中から、両氏がそれぞれテーマを持って選び出した「レコードジャケット」の本である。これは音楽の本ではなく、「レコードジャケット」の本なのだ。であるから、純粋に音楽が好きな人よりは、デザインや装丁、雰囲気、配色などに興味がある人が見るほうが楽しめるかもしれない。私もそのような楽しみが持ちたくて読んだ。とても面白く読んだ。
私はレコードコレクターでも、音楽ファンでもないので、出てくるレコードは一枚たりとも見た事がない。ページをめくるごとに未知が溢れている。読書の最も基本的な楽しみを思い出させてくれる素敵な一冊。選び出したレコードジャケットにまつわる(まつわらないこともある)ショートエッセイも見所。レコードにまつわる対談もある。両氏の活動の根っこの部分、何かを作り上げる際の少なからずの影響を垣間見たい人にとっては必読かもしれない。
いつもレコードのことばかり考えている人にも、まったくレコードのことを考えたことがない人にも、オススメしたい。ただ値段が少し、高いと感じるかもしれない。プレゼントにするには、しかし手ごろすぎるとも、思うのだけれど。