吉行淳之介 編『酒中日記』
『小説現代』の名物コーナーを吉行淳之介が収録・再編集した一冊。私が読んだのは中公文庫版。
目次を見て驚くが、昭和を彩る作家が大勢!
吉行淳之介、北杜夫、開高健、遠藤周作、阿川弘之、瀬戸内晴美、水上勉、山口瞳、丸谷才一、色川武大、田辺聖子……などなど。これほど贅沢なエッセイ集もなかなかあるまい。
皆、それにしてもよく飲み、よく楽しんでいるものだ。よい作家になるためにはよい酒席とよい友人、そして行き着けのバーや料理屋が必要なのではないか、と錯覚するほどである。
そんな中、星新一が「異様なる発想は、健全な生活のなかからうまれる。銀座のバーで飲んでくだを巻く日常のなかからは、平凡な発想しか出てこないのではなかろうか。」と書いていて、それまでいろいろと皆がバーで飲んだりどこぞで飲んだりの話をしてきたあとでそりゃないだろうと思ったら、このとき星新一はハワイにいた。私も数日前までは香川にいて、田畑の広がる山道やらを歩いていたので、その気持ちはなんとなくわからないでもない。
(まぁ、読む限りでは、皆が皆、「くだを巻く」ような飲み方はしていなさそうだけれど)
何が面白いのか考えてみたら、興味ある作家の交友録はもちろんだが、この文章には書かれていない事柄や空気、つまり「行間の奥行き」のようなものが酒席にはあって、そこを想像したり同調したりするのが面白いのだろうな。
酒は人生の潤滑油なんていいますが、あながち間違いでもない。飲めても飲めなくても、酒がある限り、そこには空気と人間とドラマがあるものだ。
あぁ、飲みに行きたい。