『二人ぼっち』、『君と僕の街で』……他。




このところ、旺盛に恋人とマンガの貸し借りをしている。少ない資金で色々楽しむには、やはり貸し借りが一番だ。zipでくれ、なんていうのは、どうにも性に合わない。私はマンガが好きだが、同様に本(もっといえば紙)そのものも好きなので、読書は「めくるもの」である。ぺらぺらやらねばいかん。
現在手元にないマンガもいくつかあるので、書名の記録程度に記しておく。しかしこうして見ると、ここしばらくほんわかしたものしか読んでいないということに気づかされる。


谷川史子『きみのことすきなんだ 谷川史子傑作選』
谷川史子『君と僕の街で 谷川史子オムニバス集』
谷川史子『ぼくらの気持ち 谷川史子秀作選』
谷川史子の文庫が手に入ったので、もくもくと読んでみた。
私が想像する「少女漫画」の王道を行くようなストーリーラインに、いまさらながらにどきどきした。細かなところで谷川の巧みさが表れていて、時代を超える強さのようなものを感じながら読むことができた。
手元に本がない(貸出中)なので、具体的にここがこうだ!というのは、また戻ってきてから書いてみたいところ。まぁ、もっとも、書くかどうかは別として……。いやはや。


かがみふみを『まちまち』(2)
コレは世代論なのかもしれないが、私がリアルに小・中学生くらいの時なら「あぁ、気恥ずかしくて読んでられないよー」と閉じてしまったような匂いが1ページごとに充満していて、それがたまらなくイイのである。私が当時読めなかった匂いを放っている作品が現在においても存在し、楽しませてくれることが素敵なのだ。恋愛が多様化し簡略化し、その形成方を変えても、私たちは同じようなことで悩み、ゆらゆらとしてしまうことは変わらない……。
1巻を「思春期ど真ん中のラブストーリー」と私は評したが、2巻ではファーストキスを済ませ、その後の展開までいこうとしている。むしろ1巻でファーストキスを済ませていなかったことに驚きもしたのだが、それだけにセックスフラグを立てにかかった時には「展開が急すぎる!しっかりしろ古賀くん!(←彼氏)」と、かえってその動きを残念に思った私がいた。不思議な感覚だった。これだけ少年マンガがやれ乳首補正だパンチラだと騒ぎ、少女マンガがレイプだ「俺のものになれよ……」だとおかしな方向へ加速していく昨今である。たったそれくらいのことで、これほど動揺してしまう自分がおかしかったのもあるし、そんな反応ができたことが嬉しかったのもある。極端に性の匂いがなかったところへ、性的要素を盛り込む(しかも盛り込み方としてはやや早急)というストーリーには異論のある者もいるかもしれないが、私はこの展開のおかげがあって、さらに『まちまち』という作品が深まったと考える。
どんな純粋に「思春期ど真ん中のラブストーリー」をやっても、いずれは性的な交わりというものが絡んでくることは避けられない。避ければそれは、そのまま「恋愛マンガ」(「マンガのような恋愛」)になってしまうだろう。高木さんと古賀くんというカップルがより身近に、それこそ自分の住む街にもいるのではないか、と思わせるリアリティを出すことに、この展開は少なからず成功していると思える。


南ひろこ『二人ぼっち』
スマッシュヒットな作品。定年を迎えた旦那さんと奥さんが、日常を淡々と、しかし面白おかしく過ごす姿を描いている。それこそ「どこかにいそうな」「どこかにありそうな」お話であり、またこの年代に達していない全員が「そうなるかもしれない」可能性を孕んだネタである、ともいえる。
この老夫婦はきっとよい歳の取り方をしてきたに違いない。互いに思い合い、支えあってきたからこその雰囲気が伝わってくる。誰しも「あー、こんな老後いいなぁ」と憧れてしまうような(そこはやや類型的理想的でさえある)姿があり、老後不安が叫ばれる今だからこそ妙に面白い作品である。自分たちが登場人物たちと同い年、同じ世代になったときにどうなっているか、雲の中闇の中にある将来や未来を、読後に想像せずにはいられないだろう。コミカルに明るく描かれている4コママンガではあるが、それ以上の意味を汲み取ることさえ可能な実に面白い本だ。年齢を問わず薦められる。


宇仁田ゆみ『よにんぐらし』(1)、(2)
続巻を読みたくてたまらない。
だが、手元にないので感想は略す。
とりあえず一言、父ちゃんカッコよすぎる。


こうの史代『街角花だより』
こんな言い方は無学で無知な私の拙さを露呈してしまうかもしれないが、こうの史代手塚治虫のような「ストーリーまんが」の正統的で確信的な後継者じゃないかと思うのだ。手塚治虫というより、作風が似ていることもあるのかもしれないが、滝田ゆうだ。滝田ゆうのマンガを読んでいるときと似たような感慨を抱いた。その点では、現在のマンガの主流(売れ筋?)とは一線を介すマンガではあるが、「あぁ、これは時代に負けないのだろうなぁ」という不思議な確信が持てる一冊だろう。どの世代、どの時代に読んでも、懐かしさや胸の温まる感じを味わえる良作だ。


オザキミカ『だてまき』(1)
150cmアンダーの奥さんと、180cm越えの旦那さんという若い夫婦の日常を描いた4コママンガ。もはや設定だけで私などはニコニコなのだが、内容も可愛く楽しくまとまっている。背は小さいけれど大食いという奥さんの設定もいいし、何よりこの二人と友達になりたい!と思わせてくれる。2巻が楽しみ。




簡単に書くつもりがこんなにだらだらと……色々言いたくなってしまうのは、もう性として諦めた方がよいのかもしれない。以前として暗い私の部屋(依然として電球を取り替えていない)に明かりが入った。窓の外は朝になってしまっている。私の夜はこれからはじまる、ということだ。日曜日を甘受しようと思う。