『シュガーはお年頃』『東京マーブルチョコレート』……他。




本棚の上に未読の本が積んである。書きながら左に目をやると、それが見える。数えてみると20冊ほどある。古本屋に出かけていくと、「あ、これ読みたかったんだよな」だとか「探してたんだよなーこれ」だとか思い、つい買ってしまうのだが、どうしても文字モノは読むのに時間がかかるため、溜まってしまう。溜まってしまったなぁとぼやきつつ、新しい本を買ってきて、そちらから先に読んでしまったりする……そんな話を他人にすると「買ってあるのを読んでから、新しいのを買えばいいじゃない」などと言われる。わかっている、わかってはいるのだ……。
しかし、この私のうなうなっとした気持ち、未読本の山を抱える読書好きの皆様には、少なからずわかっていただけるのではないか、とも思う。あえて宣言すれば、読書好きは気まぐれなのだ。したいときにできない、ということが、もっとも嫌なのである。そのためには本のストック(読みたいなぁという気にさせてくれたもの)をとりあえず手元に置いておくのが、ある意味でのリスクマネージメントなのである。
と、自分を肯定したところで、読書日記。



二宮ひかるシュガーはお年頃』(1)
前作『おもいで』は短編集だったため、連載としては『犬姫様』以来ということになるか。なんだか久しぶりのような、そうでもないような。たぶんそれは、私がなにかと『ハネムーンサラダ』あたりを読み返しているからなのだろう。
本作『シュガーはお年頃』は「娼婦になりたい」夢を持つ女子高生が主人公。もちろん娼婦になりたい、というのは本心というより、願望でしかなく……いや願望というのとも違って、性的なことへの憧れが妙に捻くれてしまっただけのことである。少なくとも本作の主人公に関しては、純粋に、気持ちよくしてみたい……それだけ、という。だから「なぜ娼婦になりたいの」と問われても、彼女は答えることができない。娼婦というのは「する」ことの手段でしかないから。それは血気盛んな男子高校生が「男娼」という響きに少なからず憧れてしまうのと似ている。
この『シュガーはお年頃』は、二宮ひかるの短編『オトシゴロ』(『乱れる My Best Remix』に収録)を下敷きにしている。設定や展開も似ている部分も多い。だが1巻が終わった時点で、短編よりも踏み込んだ地点にきた(書かれていなかったことが書いてある)こともあり、2巻からが本当の勝負だ、という私の勝手な気持ちがある。楽しみに待っている。


金田一蓮十郎マーメイドライン
しっかり研究しているな、という印象。『ニコイチ』や『ハレグウ』でのポップさや明るさを抑えて、しっかり「少女漫画」へ取り組もうとしているというべきか。それが成功しているかというと疑問が残る。金田一蓮十郎の絵が大きなコマにあまり向いていないせいもあるかもしれないが、どうにも紙面に華がない。ストーリーラインが面白かっただけに残念。
コミック百合姫』という場に、金田一蓮十郎を呼ぶ、という果敢な試みは買いたいが、成果としては今ひとつだったかもしれない。ただ、収録作『あゆみとあいか』は『ニコイチ』のカップル版とでも言うべき別ベクトルの面白さを保有しているので、これはこれで、もっと先が読みたいという思いがある。


谷川史子東京マーブルチョコレート
攻殻機動隊』などで名を馳せるアニメーション製作会社「プロダクションI.G」のOVA東京マーブルチョコレート』のキャラクターデザインを、谷川が手がけたことによって生まれたコラボレーション作品。谷川にとっては、自分の手で生み出したキャラクターが他者によって作品化され、その作品化を経て、また自分の手に帰ってくるという過程があり、難しさも楽しさもあったのではないかと思う。
それにしてもいい絵を描く人である。ストーリーにそれほど着目すべきところはない(斬新さに欠ける)と感じるが、読後の気持ちのよさは、やはり谷川の力があってこそだろう。いい話を読んだなー、という思いにさせてくれる。
そして、まぁ、書くまでもなく、最近の私の傾向から言っても、ラストはニヤリとせざるを得ないのであった。もしかしたら谷川はこの手のやり方が好きなのか?それならもっとファンになってしまうのだが。まぁ、まずはまだまだ、他作品を読む必要がある。