『まちまち』、『孤独のグルメ』、『ルート225』……他。




消費ペースが早いだけに、気を抜くとすぐ数冊溜まってしまう。
前回は無駄に時間をかけてしまったので、今回こそ、簡略して書く!という信念をもって読書日記スタート。


手塚治虫アドルフに告ぐ』(3)〜(5)
面白さのあまり一気読み。
ばらばらの糸が絡み合っていく過程は面白さにあふれていた。どきどきも、した。
ただ、出てくる女性たちが随分と惚れっぽい人ばかりだなぁと感じたのは、余計な読み方だったか? 時代のせい? なんにせよ、そのあたりのストーリー上の作意はあるにせよないにせよ、面白かったのは事実。
あー、でもやっぱり、最後の決闘シーンだけが解せない。いわゆる超展開じゃないのか、あれは。どうなんだろう。
まぁ、手塚治虫クラスになると、とってもとっても読み込んでいる人がわんさかいるだろうから、あまり多くを語るのをやめておこう。


福満しげゆき『まだ旅立ってもいないのに』
タイトルが秀逸。これだけで雰囲気が伝わる。
内容は、今の福満がどれだけ「読者に優しくて面白いもの」を書いているかがよくわかる。昔はこういう、なんというか、『ガロ』っぽさに溢れていたのだな。これはこれでなかなか興味深い。今は省略されているけれど(絵的には今のほうが私は好みだ)緻密な福満絵というのも案外イケる。寂寥感が際立つ。映画の登場人物同士で会話する『つまらない映画の中の君とつまらない映画の中の僕』が気に入った。
それと、福満の性欲に対する執着心というか描き方というのは、一度じっくり腰を据えて切り込んでみたいところだなーと再確認。そのためにも他作品を読まねば。


福満しげゆきうちの妻ってどうでしょう?』(1)
最新刊。これはもう、福満ファンというより「福満の妻ファン」のための一冊。福満の妻が好き、気になる、愛しい、腹立たしい、イライラする、バカ可愛い、理解できない……何でもよいから福満の妻に関心や興味が注がれてしまう人には、結構たまらないのではないか。つまり私は、たまらなかったわけだ。その人の特有の生態(早い話が癖)を描くだけで、なんとなしに手触りのあるネタができてしまうというのも、マンガの面白いところ。
余談だけれど、妻がパンか何かを食べているときの疑問「もっもっもっ」の虜になった。「もぐもぐ」ではなく「もっもっもっ」。雰囲気があるではないか。絵とマッチして、これは『かってに改蔵』の「めるめる」に匹敵するくらいのものだ! と、ひとり悦に入った。それと福満の妻の時折混じる方言が可愛い。まぁ、これは単に私が方言好きなだけ、というのもあるのだろうが。


かがみふみを『まちまち』(1)
背がとても高い男の子と背がとても低い女の子のいじらしいラブストーリー『ちまちま』で私の心を大いにかっさらっていたかがみふみをだが、近作『まちまち』はその逆パターンである。背が高いことをコンプレックスに思っている女の子と、その女の子に背が抜かれてしまった幼馴染の男の子がメイン人物。『ちまちま』との大きな違いは、性別だけではなく、知り合っている期間の長さに差があるということだろう。幼い頃、自分は女の子よりも背が高かったのに……という記憶(幼いプライド)があるだけに、男の子は事あるごとに自分の身長に対してコンプレックスをむき出しにしてしまう。また女の子も女の子でそのコンプレックスを超えられずにいるところがあり、ふたりして自滅しているシーンがあるのだが、それが何とも言えず、よいのである。これでこそ中学生、これでこそ思春期ど真ん中のラブストーリーではないか、と思う。
忘れかけていた、いやもう忘れてしまった感情や感覚を、思い起こさせてくれる一冊だ。


久住昌之谷口ジロー孤独のグルメ
読んでみたい読んでみたいと思いながら読めていなかった本ほど、一ページ目を開くのが遅くなってしまうことが往々にある。「そういう本がある」というだけで、どこか満足してしまう気持ちがあるのかもしれない。
さて、『孤独のグルメ』は評判通り、波乱も展開もない不思議なマンガだ。面白さの大きな要素である「葛藤」(主人公の内面的葛藤)が大きな推進力となって、このマンガを推し進めている。第15話『東京都内某所の深夜のコンビニ・フーズ』は孤独のグルメのある意味究極を行くような回ではないかと思う。深夜にまで仕事が及び、夜食を買おうと出かけたコンビニで、白米を基点に惣菜数品に加えて勢いでコンビーフやおでんなども買い、合計金額2000円オーバーをたたき出す主人公が、自室に戻り、それらを机の上にずらりと並べ、もくもくと食べていくシーンは、見ているだけで「羨ましい」と思う一方で「まったく真正孤独なグルメだ……」と、どこか座りの悪い気持ちが味わえてよい。
文庫版を買って読んだ後で、新装版(特別編が加えられている)が出ていることを知り、がっかりした。読みたい。


二ノ宮知子『平成よっぱらい研究所 完全版』
身に覚えがあることが多く、痛快に笑ってしまうのだが「ははははは……は、はぁー」とひとしきり笑った最後が必ず乾いた音になってしまうような『平成よっぱらい研究所』パート。読めば読むほど飲みに行きたくなるので困る、と思ったが最後、本当に飲みに行ってしまい記憶を消滅させたのは楽しい思い出。
『飲みにいこうぜ!!』は、私の理想妄想具現化マンガとしか言いようがない。もちろん、主人公のように、気高く強い酒飲みになりたいものである。たまには、ご迷惑をかけずに、うん。ええと、精進致す所存。


藤野千夜志村貴子『ルート225』
志村貴子の原作付き……と不安に思いつつも買ったが、うーん、これは果たして原作がよくないのか、それともマンガ版にするにあたってこの展開になったのかわからないが、ひどい話のまとめ方にがっかりした。謎をどう解き明かすか、どう解決するか、というそれまでの大きな流れをぶった切ってよそへ放り投げてしまうような結末だと思った。9話までの私のテンションの昂ぶりを返して欲しい、と久しぶりに本を投げつけたくなったがグッと我慢できたのは、やはり志村貴子の絵が好きだからであり、今回はカラーの水彩もやりすぎなくらい映えていてよかった。



朝だ、寝よう、と思ったのだが、意外に指と頭が動くので、もう少し書いて寝る。