『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『ハチワンダイバー』……他。




消費サイクルが早いだけに、マンガは厄介だ。溜めようと思えばすぐに溜まる。でも、読むのも買うのもやめられない。


中村光『中村工房』(1)〜(3)
ニコ動風に言えば、『聖☆おにいさん』からきました、というところ。いや面白かった。ただ完成度はやはり『聖☆おにいさん』に軍配なのだけれど、センスの良さはすでに発揮されているなぁと感じた。『荒川アンダーザブリッジ』も読まなくてはいけないような気になってきた。


シギサワカヤ『九月病』(上)(下)
一言。
二宮ひかる」や「榎本ナリコ」が好きな人は間違いなく好き。
つまり、私は大好きということ。よい意味で、「二宮ひかる」や「榎本ナリコ」を足して2で割ったような印象だった。「二宮ひかる」のキャラクター性と「榎本ナリコ」の文学臭をほどよく配合したような心地よさ。うーん。芳文社『コミック エール!』で連載していた『溺れるようにできている。』が最終回を迎えたそうなので、単行本が今から楽しみ。


あらゐけいいち『日常』(一)
個人的には『聖☆おにいさん』に匹敵するほどのヒット。『あずまんが大王』の絵柄と空気感をギャグにひねり倒してシュールを盛り込んだような、ああなんだか書いている私も意味がわからないけれど、とにかくそんな感想。このシュール空間には腹筋が耐えられなかった。
第9話目「日常の9」がまったく素晴らしい。トランプタワーの最上段を作ろうとする話なのだが、セリフが一切なく、挙動とデフォルメだけで乗り切ってしまうこの得体の知れないパワーは相当なもの。頭の中で「こんなこと言ってるのかなー」と想像するもよし、トランプタワー最上段という緊張感を空白から読み取るもよし。結末は皆一様に、どうせ笑ってしまうのだから。


福満しげゆき僕の小規模な失敗
作者の自伝的マンガ。もう典型的なネガティブ野郎を地で行く主人公に、共感したり反発したりするのだが、これだけ地面に足をべったりつけて進めるマンガもなかなか無いんじゃないかな、と思った。恐ろしいまでの客観的な視点と、どうしようも出来ないほどじれったい主観的な視点とが入り混じって、読んでいるものに様々な気持ちを起こさせる。私は幸い(?)「あー、もー、しょうもねーなー!」と笑いながら読んだのだが、人によっては暗黒部分に同調するところがありすぎて穏やかな気持ちで読めないのかもしれない。ある意味で、読者を選ぶマンガだが、ぜひ挑戦してみてほしい一冊でもある。
でも、この主人公、なんだかんだで色々と成功させている(大学受験やら柔道部やら)から、まるっきりダメってわけでもないんだよな。そこが人としての救いでもあるし、マンガ的な救いでもあるんだろうな。でないと話が進まない。


手塚治虫アドルフに告ぐ』(1)(2)
なぜいまさらという声が聞こえてきそうだが、私もなぜだかわからない。たしかバイト先の本屋で、そうそう、返品作業をしているときに目に留まって……数ページ読んだら「あ、これは面白そうだ」と私のマンガセンサーが反応したのだ。早速2巻まで購入して読んだが、面白い。実は私にとって初めての手塚治虫体験になるのだが、不思議と最近出ているマンガとそれほど何かが変わっているという印象は無い。あるとすれば絵柄とコマ割りだけだ。あと3巻分で物語がどう転ぶのかわからないので、すぐに手に入れて読んでいくつもりだ。


ももせたまみももいろスウィーティー』(3)
加藤先生と酒飲みてぇ!!!!!!
ももせたまみのマンガは好きでほぼ全作追っているけれど、あー、久しぶりに読んでもやっぱりいいなぁ。和むし笑えるし、キャラクターが可愛いしで、本当に的確にツボを押さえてくれる。
しかし加藤先生が愛されるキャラすぎて困る。あとはそうだな、ハルカお母さんに心も愚息もきゅんきゅんしっぱなしでした。愛してる。


真鍋昌平闇金ウシジマくん』(11)
弱きから立ち上がる強者と、弱きを虚勢で塗り固める愚者と、弱さを夢と理想でぼやかす弱者。小堀、板橋、小堀の妻が、私にはそのように感じられた。小堀の姿に泣ける。自分も来年はサラリーマンだからかもしれないが……。板橋が悪いのかといえば、もちろん悪いのだ。小堀も器用でないし、足りないところがあるからこのような結果になる。しかし、この「いい人が損をする」方式は、岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』で述べられていた「オトナのコドモ化」に通ずるところがあって面白かった。
それにしても、みんなは、人は、どうしてこんなに「寂しがる」のだろう。
私にはいまいちわからない。


花沢健吾ボーイズ・オン・ザ・ラン』(9)
ちはるの性悪っぷりに椅子を蹴り飛ばしてしまった。私はビッチといわれる人たちが無自覚的にビッチなのかと考えていたのだが、最近になって2ちゃんねるの「過激な恋愛」板での「出会い系面接報告スレ」などを読んで、ビッチにも自覚的で肯定的なビッチがいるのだな、と思いを改めた。私にとってのビッチの捉え方として、「当人の自由にすればいいけれど決して性悪であってはいけない」という基準が、そのときに生まれたのである。で、あるから、ちはるのあのやり方には腹が立ったわけだ。あんなの、誰も幸せにならない。ちはる本人でさえ、幸せにならない。意味の無い、まったく認められるところの無い、非道で、酌量の余地の無いことだ。ちくしょう。と、こうやって田西に自分を乗り移らせて田西よりも怒り田西よりも悲しめるというのは、ひとえに花沢健吾の魅力なんだろうなぁと思うのです。
そして巻末で衝撃の「次巻で最終巻」発表があった。はっきり言ってショックだ。本誌を追っている人にそのことを告げたら「まだ終わる余裕も何も無い」と言っていたので、いったいどうなるものかと今から楽しみで仕方ない。


森薫『エマ』(10)
最終話で涙を抑えられなかった。身内の結婚式に参加したかのような嬉しさでいっぱいになってしまったのだ。それは、6年という歳月をかけて描ききった森薫への私なりの花束のように思うし、「ありがとう」の代わりになるものだと思う。マンガには愛が大切なのだということを、森薫は身をもって教えてくれたんじゃないだろうか。単純な絵の上達はもちろんだけれど、その世界観を形つくる細かなディテールは、もうどうにも資料と知識と愛の賜物だったと断言して、私は敬服せずにはいられないのであります。
森薫先生、お疲れ様でした。最終話のアデーレさんの「アレ」は、リアルにコーヒー噴き出しました。


ふなつ一輝華麗なる食卓』(28)
いやー、燃えた。「黄花楼」対「高円寺マキト」は、向井とマキトという師弟対決でもあり、松部にとっちゃ紫音への愛のロードでもあるわけで、色々絡み合ったこの一戦。料理はもちろん人間関係に、私はぎゅぎゅんと興奮。それでまた、対戦後のそれぞれのストーリーがいい。とりあえず、松部よかったなぁ松部。最初出てきたときはホント嫌だったけど、いつからこんな愛されるキャラになったんだ、おい。
そして相変わらずふなつさんの描く女の子たちが可愛すぎて困る。


久世番子『番線〜本にまつわるエトセトラ〜』
暴れん坊本屋さん』でまさかのリアル本屋さんマンガを描いてブレイクしたリアル書店員兼マンガ家の久世番子の新刊。『暴れん坊本屋さん』1巻が身内買いで店頭分がなくなったなんていう伝説が私のバイト先の書店ではあるだけれど、『番線』はもっと単純に「本好きのための本」という感じ。『暴れん坊本屋さん』よりも敷居が下がったように思うが、やや物足りないというのも素直な感想か。それにしても、本好きというのはみんな同じようなことで悩んでいるものなんだな……と、本棚の話を読んで思った。私もスライド部分に本を積んでいるがゆえに、スライドできなくなってしまっている。片付けよう。


柴田ヨクサルハチワンダイバー』(1)〜(6)
このマンガがすごい!2008』のオトコ編1位を獲った作品だが、面白い面白いと方々で聞いており気になってはいたものの、読めていなかった。全巻所有している友人宅で一気読みして、その面白さと熱さと馬鹿馬鹿しさに打ち震えた。将棋マンガと聞いてはいたが、もうほとんど格闘マンガの方程式に沿っていて、「『ハチワンダイバー』を読んで将棋をはじめました!」なんていう声が聞こえなそうなところが素晴らしくイイ。「この一局に勝ったものがオッパイを揉む!」だの「人生を賭けよう。負けたら漫画家を目指してもらう」だの、もはや迷走と言われても仕方の無いストーリーをぎりぎりのところで落としていないような印象もあり、愛すべき(将棋)馬鹿たちで構成された将棋ファイトも見所満載でたまらない。これは、面白いマンガだ。そして何か、盗めやしないかと目を凝らしてしまう魅力を持ち合わせてもいる。


■『COMIC快楽天』2008年5月号
私的には今号は不作。小梅けいとは相変わらず。相変わらずで結構なんですが。あー、西安『セフレママン』が西安の魅力大爆発という感じでグッときたか……。それにしても道満晴明のマンガは毎号飛び道具を食らっているような心持になる。童話にセックスを持ち込むという離れ業、こんなの見たことねぇ。あ、ポン貴花田の新刊が『ぴたごらすびっち』で、まったく天才だと思いました。


■『COMIC快楽天』2008年6月号
中出し比率がとても高かったように思うのは気のせいか?流行っているのか、たまたまか、精液を描くのが面倒なのか。いや中出しは中出しでいいのだけれど、フェラ好きな私としては、こう、そればっかりでも寂しい。
恩田チロ小梅けいと馬鈴薯が今回の3強か。絵柄とストーリーが好みだったこんちき『望月さんの覇道恋愛』は、もっと読みたいと思わされた。何しろ望月さんが可愛すぎて仕方ないのだが、宮里君もうちょっと処女喪失は穏やかにやってあげてくださいマジで……そこ乗り越えてくれたら今号1位だったのに、と思う。実用性は乏しいが、かるま龍狼ツンデレの果てに』は普通にマンガとして面白かった。この人は在る言葉とか在る事象とか、そういうものを新しい切り口で(しかも誰もそんな風には考えないような変な切り方で)成立させていくから面白い。で、道満晴明『ぱら☆いそ』の単行本化はまだ?まさかエロマンガ雑誌で声だして笑うとは思わなかった。


■『COMIC HOT MILK』Vol.5
ついに次号から独立創刊になるそうで。おめでとうございます。今号も意欲的な実力・人気作家が終結していて読み応えがあった。来鈍好きなので巻頭で見たときは嬉しかったけれど、なんだか絵柄が変わったのか、昔ほどの興奮が無かった……『御家庭の快楽』のあたりが好きなんだよなぁ。松本ドリル研究所、石恵、如月群真あたりはもう鉄板として、今号はぷよんとヒヂリレイがヒットだった。ぷよんは可愛いのにエロい(ただちょっと精液が固体化しすぎなのがマイナス)という「私的エロマンガ成功条件」を満たしているし、キャロが「あーん」をしたときの口がなんとも言えずそそるのでハナマル。ヒヂリレイは、私思ったのだが、単純にこういう絵柄が好みなんじゃないか。八十八良とか馬鈴薯とか……そのあたりで系統立てているような気もする。
しかし、なんといっても天太郎『レッスン とぅゆ〜』が私は好きで、ひだまりが幸せになってくれて心底嬉しかったのだが、実用度から言えばVol.2のひだまりが一番なのである。フェラ好きの私も満足。えっちになると可愛さが急激に増すひだまりがたまらんわけで。えー。何を書いているのだろう……と思ったら時計がびっくりするほど進んでいて、私は気軽に読書日記を書くつもりだったのに、それなりに恐ろしい分量になってしまっていて焦っている。