まったく見知らぬおじさんに




肉まんとコーヒーをおごっていただいた!

歩いていたら突然に、
「にいちゃん、一人旅か?」
と、声をかけられた。
話してみると、おじさんも学生時代にバックパッカーで、日本中を旅したことがある(全都道府県庁所在地制覇!)のだそうだ。
私のリュックにぶらさげてあるシュラフを見て、自分と同じように旅をしている若者がいると、声をかけたらしい。
おじさんは自分の旅の話や息子の話、嫁さんとの馴れ初めに至るまで、いろいろなことを聞かせてくれた。
しばらく話しながら歩いていたら、コンビニがあった。おじさんは押していた自転車を止め、
「あんまんでも買うてあげるわ」
そう言って、私を促した。うどんばかりで脂肪分やタンパク質に飢えていた私は肉まんを選ぶと、おじさんはコーヒーも一緒にレジへ出した。
コンビニの裏手で風をよけながら、おじさんは、首の裏が張っているなーと揉んでくれたり、筋肉痛にならない方法を教えてくれたり、自分も旅をしているときにこうして見知らぬ人におごってもらったことがあったり、北海道で老夫婦が4泊もさせてくれたことがあったり、来年で嫁と銀婚式なのだと言ったり、中間管理職は大変でな……と寂しそうな目をしたりと、コーヒーが冷たくなってしまうくらい色々の話をした。
「自分もこうやって助けてもろたから、またにいちゃんが大人になって同じようにな、助けてあげたら素敵やな」
おじさんは笑って言った。
私は大きく頷いて、去っていくおじさんに深く頭を下げ、礼を述べた。

肉まんはとてもおいしかった。
お腹が空いていたからというだけでは、きっとない。