『YOGA』(DVD)




果たして映画というジャンルで感想を書いてもよいものか、と思う。
なぜなら『YOGA』はアダルトビデオだから。
でも私は映画としての感想を書く。
なぜなら『YOGA』はロードムービーでもあるから。


監督はハメ撮り界の富野由悠季ことカンパニー松尾。制作は彼の所属する事務所ハマジム。その点ではこの作品は紛れもなくAVなのだろうけれど、それだけでは割り切れない面白さがある。でもよくよく考えれば、AVだって映画だって映像作品であることには違いないのだから、どう観たって構わないはず。私はそうやって色んな物事を考えることにするのだ。


飛鳥、という女性、彼女はヨーガをやっている。カンパニー松尾はカレーが大好き。一組のカップルが、目的は違えど、インドへ旅立つ。ヨーガとカレーとセックスをめぐる7日間。人気テレビ番組『あいのり』が「純情そうなラヴ」だけを追ってひたすら世界各地を巡っているという可笑しさは、この『YOGA』によってすっかり炙り出されてしまう。「あいのり」が徹底的に性的な匂いをかき消してしまっているのと対照的に、『YOGA』には(もっとも彼女とカンパニー松尾との間にラヴがあるかどうかは別として)リアルな旅情と哀愁がある。限りなく本物っぽい空気がある。作り物であるAVの方が、「あいのり」よりよっぽど現実味がある、という逆転さえ起きる。


『YOGA』はAVではなくロードームービーであるから、と冒頭に書いたけれど、それでも『YOGA』はAVでなければならなかった。セックスを込みにした男女の旅程を赤裸々に見せるには、このフィールドがイチバン収まりがいいのだ。そこには勃起するためのAVとは別の「映像作品としてのAV」なる面白さが存在する。これは人によって賛否が分かれるだろうけれど、画面の前に座る私の約2時間では、その面白さを見逃せない。かつて荒木経惟が『センチメンタルな旅』で行ったことさえ、『YOGA』を見ていると思い出してしまう。


深夜。映画を見るつもりで、酒やコーヒーをそばにおいて、鑑賞するのがおすすめだ。きっと、不思議な気持ちを抱くことができるだろう。AVとしては迷作かもしれないが映像作品として名作である、と思う。