酔っ払いの社交力。




先週の土曜日、アルバイト先で飲み会があった。ある社員が、別の店舗に異動になってしまうため、送別会を行ったのだ。
18時過ぎに集まったのは、私と異動する社員を含めた5人。のんびりと始まり、やがて予定を終えたものや、その日アルバイトに入っていた同僚、その後に勤務を終えた社員が集まり、参加者が全員揃ったのはもう23時に近くなっていた。
私、一度飲んでしまうと、大抵は気が済むまで延々飲んでしまう。強制ストップをかけられる、もしくは金銭や場の事情によりかけざるを得ない限りは、粛々と、しかし諾々と「ほれ、飲めるだろ、つーか飲みたいんだろ?」というお酒様の快楽声を聞いてしまう。この日、私はビールを飲んでいた。ビールは、大ビン5本を超えると、限界突破である。3リットルを超えたあたりから、危険水域というわけだ。23時の時点で、私はおそらく4本を消費していた。アルバイト先で集まるということはほとんどない(予定が合わなかったり、定休日がないので難しいのだ)せいもあって、同僚の普段話せないことや見られない姿などが楽しく、テンション高く飲んでいた。酔いは、雰囲気も関わる。場の雰囲気、自分の高揚が合わされば、酒は妙にまわるものだ。
0時近くなったころ、私はもう、意識が混濁していた。つまり、後になってほとんど思い出せないほどの酔った状態になっていた、そうだ。気づいたときには、私の周りにアルバイト先で見知った顔はなく、全く知らない同い年の大学生男女がわらわらといた。胸の大きな女の子と、メガネをかけた好青年と、なぜか「彼女を大切にしなきゃだめだよ!」とお叱りを受けたショートカットの女の子の顔だけは、なんとなく覚えているのだが、何を話したかも、なぜ隣の座卓で飲んでいた集団に混ざって飲んでいたかも思い出せない。しかしながら、私はますます楽しく飲み、夜中の2時ごろ帰宅した、ようだ。
財布や携帯電話などはしっかりあったのだが、愛用の黒縁メガネと数時間の詳細な記憶を失い、左側頭部にたんこぶをつくっていた。

そんなことがあった後、今日になってアルバイトに行くと、出会う人出会う人に「ちゃんと帰れた?」「無事だった?」「いつのまにか隣にいたよ、そんですげー楽しそうだったよ」などと言われ、その都度「心配かけてすみません、ちゃんと帰れました」と言わなくてはならなかった。
全く知らない人と酔った勢いで言葉を交わし、そのままなんとなく一緒に飲んでしまうという体験は、初めてではない。そしてそれは、往々にして楽しい。あまり覚えていないのが玉に瑕だが、こういうところでこっそりとしっかりと、他人に対しての社交力をなんとなく高めていっているのかもしれない、などと前向きに捉えることにしている。
酔っ払い、と一蹴されれば、まぁそれまでなのだけど。