桑島由一『神様家族Z』



ライトノベルを中心に活動する桑島由一の代表作にして出世作神様家族』の続編。
出る出ると言われながら出なかっただけに、ファンとしては待ち望んでおりました。


うーん。テンコってこんなに言語崩壊起こしてたっけ?
なんかもう少ししっかりしたキャラクターだったような気がするんだけど……気のせいか、それとも恋の力か?
テイストはしっかり『神様家族』だし、進一も愛もホント、いい感じに出てくるし、新キャラもカワイイ。
文句はないけれど、どことなく腑に落ちないのはなんでかなぁ……。


私は桑島由一をNO DISC RECORDS*1も含めて結構注目してきているのですが、NDilで出した『鍵穴ポエム』や『ザ・スケルトンダンス』を読んでしまうと、桑島由一の根底にはどろっとした負の資質が備わっていて、かつそれを書ける力があると知ってしまったからしっくりこないのかもしれない。桑島由一が『神様家族』を必死で演じている風に思えてしまう、という、作品単体で見てやれよお前っていう読書家としてはあまりよろしくない傾向といったところですね。いかんねー。
いや、面白かったんですよ!『神様家族Z』も!
でもたとえばテンコの言語崩壊率とか、最も盛り上がるシーンでのうーの急激な空気っぷりとか、なんかうまくいってないところを感じたのもたしかなわけで。私としては作中でグッときたのは、雪だるまの彼が拳を振り上げるところと、やっぱり辛い記憶が具現化して飛び出して云々のところだった。そのシーンに付きまとうのは、悲しみだったり苦しみだったりするわけで、その匂いが感じられると胸に迫るものがあるってのは、やっぱりそこが、上手くいっているからともいえるのではないかな、と。


そういう点では、テイストを合わせる気負いの少ない(少なかったであろう)『ポイポイポイ!』のが、近作では良かったと言わざるを得ないかなぁというのが正直なところ。『神様家族Z』はおそらく続刊で出そうな感じではあるので、まぁ、今後がとにかく楽しみ。